文章の基本事項

読み手は分野外を意識しよう

理系の研究となると、様々な専門用語が飛び交うわけですが、長いものになると略称が便利ですよね。

しかし、企業の人事や研究員はあなたと専門が違うことが基本です。

こんな単語、常識だと思うけど…

と思うことでも、専門外であればその分野の常識すら知らない状態です(文系出身の人事であれば尚更)。そんな聞き手に、専門用語を連発して研究を説明したとしても理解できるわけがありません。

研究に慣れてきた修士の学生に多いですが、今一度研究室に配属されたときのことを思い出してください。そのころに自分に説明すると思って資料を作成する気持ちが大事なのです。

論文や特許と言う媒体があるように、研究とは『結果を出し、発信する』ことで初めて成果になります。つまり、研究概要では伝える力も見られていることを忘れてはいけません。

それを踏まえて、研究概要を書くにあたり次のことを意識しましょう。

専門用語を極力避ける

理系である以上、専門用語が出てくるのはどうしようもありません。

しかし、使う必要のない専門用語所属している研究室特有の言い回しをしていませんか?

これらの言葉は、研究室での生活では当たり前でも、専門外の人にとっては理解度を大きく下げる原因となってしまいます。

例えば、以下の文章を読んでみてください。

MS培地を用いてイネを液体窒素中でshootおよびrootに分け、酢エチ中でソニケーションすることでABAを抽出した。

さて、理解できましたか?

おそらく植物の研究を行っている人であれば、ある程度理解できると思います。しかし、植物を扱っていない人にとっては、何を言いたいのかいまいちわからないのではないでしょうか?

この文章の内容はとても簡潔なのですが、専門用語が入ると途端に内容が難しくなります。

上の文章を簡単に解説すると、専門用語は以下のようになります。

『MS培地』や『shoot』、『root』と言った専門用語は専門外の人にはわかり難くなるため、使わないほうが得策です。

同様に、『ソニケーション』も分かる人には破砕の方法まで伝わりますが、専門外の人にはわからないため、ただ単に破砕と書いたほうが良いでしょう。

また、『酢エチ』など、その物質を扱う研究室では当たり前の呼び方でも、研究概要ではしっかりと正式名称で書くようにしましょう。

確かに、研究室配属されたころの自分だと何一つ分からない気がするね

略称を極力避ける

略称は3個が目安

化合物名や長々とした現象などは略称を用いることが一般的です。

しかし、使う必要のない略称を使用していませんか?

略称は聞きなれていない人にとっては、ただのアルファベットの羅列です。当然、一回聞いて覚えられるわけもなく、毎回その略称が何だったか確認するため上のほうの文章に戻らなければいけません。

これが1個や2個ならまだマシですが、略称を5個も6個も使うようであれば、文章が略称ばかりとなってしまい内容を理解度は大きく下がります。概ね、一つの研究概要に3個程度が無難です。

略称は文字数を削減できるけど、確かに何の略称か忘れちゃう…

略称は寛容名がない化合物や装置に使おう

10文字以下であれば略称を使わないことをお勧めします。特に、化合物の場合は相当長い化合物(寛容名がない化合物など)でない限り、寛容名で表記したほうが分かりやすいです。

例えば上の文で、『アブシジン酸』という植物ホルモンをABAと略称で表記していますが、このくらいの文字数であれば『アブシジン酸』と日本語で書くほうがはるかに理解しやすくなります。

また、疾患や現象なども、略称より日本語で書いたほうが一目で理解できるため、略称を使わないほうが良いことは明白ですね。

CVDじゃわからないけど、脳卒中なら確かに私でもわかる!

略称を使うことで多くの内容を書くことができますが、研究概要では専門外の人に伝えることを忘れないようにしましょう。

略称を使うときは必ずスペルアウト

ABAと言われても、書いた人以外にはそれが何を指すのかはわかりません(ABAと略称できるものは世の中に幾らでもあります)。

そのため、abcisic acid(ABA)と言うように、略称を初めて使用する際は必ずスペルアウトしましょう。これは論文など、研究全般において基本的なことなので覚えておきましょう。

ただし、例外として多くの分野で使用される装置(HPLC・NMRなど)や、一般に認知されている単語(DNA・USBなど)はスペルアウトなしでいきなり略称で書いても問題ありません。

簡潔を心掛けよう

研究成果を書くときに多く見られる誤りが、実験方法などを丁寧に説明することです。

勿論、論文などでは誰でも再現できるように書くというのはとても大切なことです。しかし、企業は研究成果を見たいのではなく、研究に対する考え方を見たいのです。

そのため、実験方法や結果を事細かに書く必要はなく、重要な部分だけを書くようにしましょう。このことを意識すれば、自然と専門用語などの使用も少なくなるため、読み易い文章となります。

違う研究室の友達に見てもらおう

これらを意識するだけで、書類選考の通過率は大きく変わります。

例えば、最初に出てきた文章を実際に研究概要に書くとしたら、以下のようになります。

酢酸エチルを用いて、イネからアブシジン酸を抽出した。

とても簡単な文章ですね。

え!?こんな文章でいいの!?

と思うかもしれませんが、研究概要に記載する文章はこれくらい簡潔で良いのです。『読み易い』ということは、『理解』に繋がり、『もう少し話を聞いてみたい』と思うようになります。

特に、就活には『面接』と言う質問する場があるのが大きな違いです。論文が『文章で100%伝える』ものだとすれば、就活は『研究概要で60%を伝えて、面接で40%を質問してもらう』感じです。

また、身近にいる人の中で企業の人事や研究員に最も近いのが、他研究室の友達です。

他研究室の友達であれば、ある程度理系としての知識は持ちつつも、自分の研究は知らないという点で企業の人と類似しています(他研究室に友達がいない人は研究室の一番学年が低い後輩に読んでもらいましょう)。

そのため、完成した研究概要を読んでもらい、理解できたかどうかを聞きましょう。

友達が理解できなければ、それはまだまだあなたの研究概要が専門的と言うことなので、見直しが必要かもしれません。

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